2022/6/29に修正加筆

「窓」と同時期に制作したもの。
ライトを幾つか用意して、扉の向こうで光を使ってコミュニケーションをして欲しいと言うお題だけを渡して即興でパフォーマンスしてもらい、それらを撮影したものを繋げている。映像では開くたびに別の時間や関係に変わり続ける扉の向こうを見続ける事になる。
パフォーマンスの中での私の役割は扉の開閉で、映像には見えないが開いた扉の内側に挟まる様な位置で扉の開閉をしている。
開く時と閉じる時にルールと言うほどでもない簡単な約束があり、開く時に合図をしない事と、閉じるタイミングはその中で行われる行為に何かしら関係か物語が発生する手前で閉じる事を務めた。曖昧にも思われるかもしれないが、恐らくこのタイミングがこの映像の中で一番大切な要素だと思う。
また、定点で扉の外側に設置されたカメラはオートフォーカス設定で撮影し、扉が開き光が灯る事によって起こるフォーカスを変動し、内側にピントを合わせようとしたり出来なかったりが起こる。

何かしらとの距離みたいなモノを当時から考えていて、それを他者の生活の光という対象を仮定代入していたのだと思う。
家という構造の開口部として窓と扉には大きな差があって、それはシンプルで当たり前な話だけれども、窓から気配や様子は伺えてもそこから中に入る事は通常せず、扉は直接的に出入り口だ。
距離感という事において言えば、窓はその内部への開口部であると同時に隔たりを持ち、扉は開く事により距離を無くし閉じる事により拒絶もする極端な性質にも思える。
当時、扉は扱うには過ぎたものという印象だったけれども、距離を詰めてみる事を試す為に通過する必要のあるモチーフだった。



back